日本軍の爆薬と火工品の再現【爆薬編】

手許に実物がなく、写真すらもほとんどない状況で、わずかに残った資料をもとにした再現のため、100%とはいえませんが、おおよその目的――非電気式起爆に必要な器材一式の再現――は達成できたと思います。

 もともと日本軍の破壊器材には関心がありましたが、資料が乏しいこと、とりわけ、起爆に必要な火工品(点火具や導火線、雷管など)の詳細が不明であったため、いままで着手できませんでした。

 先日ご紹介した米軍の対日戦用模擬爆薬訓練セット(→こちらの記事「おもちゃメーカーがつくった模擬爆薬」)について調べているうちに、連合軍が押収した日本軍の爆薬と火工品にかんするレポートを得ることができ、日本側の資料とも突き合わせができたことから、ようやく着手することができました。

 トップに掲載している写真が、今回再現したダミーの爆薬(写真左)と火工品(写真右)です。爆薬は、左から九七式方形黄色薬(ピクリン酸200グラム)、九七式方形淡黄薬(RDX・TNT混合爆薬100グラム)、九七式円形淡黄薬(RDX・TNT混合爆薬100グラム)です。火工品は、上から一式点火管、一式導火索、九七式導火雷管です。

 日本陸軍の『爆破教範』(陸達第七十四号)には、工兵が破壊作業に供する爆薬と火工品が定められています。爆薬についてみていきましょう。

 1941年時点における制式爆薬は、黄色薬(ピクリン酸)、灰色薬(硝酸アンモニウム主体混合爆薬)、淡黄薬(RDX・TNT混合爆薬)の三種です。黄色、灰色、淡黄(色)の名称は、それぞれ爆薬の色をそのまま表しています。これらの制式爆薬は、それぞれ100グラムを四角のブロック状(方形)と円筒形(円形)に成形したものを、1938年に「九七式方形○○薬」、「九七式円形○○薬」として採用しています。

※黄色薬については、方形・円形爆薬のほかに、金属製の缶に爆薬をいれた爆発缶(1kg/5kg)が制式化されていましたが、今回は再現していません。

※制式爆薬がない場合には、応用爆薬(カーリット、ダイナマイト、硝安爆薬)もしくは黒色薬を破壊作業に使用します。

 爆破教範に紹介されている方形薬(右)と円形薬(左)です。方形薬は、縦5センチ・横5センチ・厚み2.5センチのブロック状の形状で、100グラムの薬包10個を防湿紙で展列包装したものです。10個のうち半数の5個は、側面に雷管を挿入する穿孔があけられています。薬包はそれぞれ分割して使用することが想定されています。また、円形薬は、直径2.9センチの紙筒に100グラムの爆薬を詰めて防湿紙で包装したものです。方形薬と同じように、片方に雷管挿入用の穿孔があけられています。

 日本軍の爆破教範には、シンプルなイラストが掲載されているだけですが、外観のディティールについては連合軍の接収資料が参考になります。それによると、各爆薬の包装は、爆薬の名称にもあるように爆薬の色に対応して、黄色薬と淡黄薬は黄色の包装紙が、灰色薬には灰色の包装紙がつかわれています。包装紙には爆薬の名称(黄色、灰色、淡黄)が記されていました。

 連合軍が接収した九七式方形黄色薬です。薬包2個(200グラム)に分割されています。連合軍のレポートでは10個の展列包装のなかに、あらかじめ2個に分割包装されたものが存在するとしています。側面に見える黒丸は雷管挿入用の穿孔を示しています。このように分割包装されたものでも、雷管挿入用の穿孔は1つです。

 前掲の写真と資料をもとに筆者が再現した九七式方形黄色薬のダミーです。薬包のブロックは石膏でつくっています。石膏の比重は爆薬に近いため、重量は実物と同様に1個が100グラム、2個の包装で200グラムです。日本軍の『弾薬取扱細則』によれば、包装用の防湿塗料はセラックワニスです。このダミーの包装も同様にニスを塗布しています。

 こちらは九七式円形淡黄薬の再現です。方形薬と同じく石膏をつかい、重量は実物と同じ100グラムです。片方に雷管挿入用の穿孔があいており、ダミー雷管を挿入できます。

 次回の記事では、再現した火工品と、起爆準備する手順についてご紹介します。

 

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