Mk. II A1 手榴弾の再現

国内で入手できるMk2手榴弾で、WW2モデルを正確に再現しているものは、自分の知る限り存在しない。精巧な海外製も物足りないので、つくってみた。

 最初に、自分が今まで入手したなかで最も出来のよいレプリカをご紹介します。先日のMk2手榴弾についての記事でご紹介した海外製のレプリカです。

 左がレプリカ、右が実物(プラクティス)です。レプリカの弾体はプラスチック、信管はアルミ製です。レバーとリングはスチール。バネとストライカーも再現されており、実物と同じギミックです。

 とても良い出来なのですが、残念なことに、重量がありません。89グラムしかないのです。実物のMk .IIA1手榴弾は炸薬を含めて約567グラムです。素材が異なるので仕方がないことですが、この差は大きいです。

 リエナクトメントをバーチャルリアリティ活動であると定義すると、その完成度は、参加者にどこまで深い没入感を与えられるかがすべてです。人間の認知の大部分は視覚と聴覚が占めますが、逆に触感系の感覚は敏感です。見た目が似ていても重量や質感が異なれば没入感が得られません。

 そこで、リエナクトメントにふさわしいMk .IIA1手榴弾の再現を目指して、製作に着手しました。

 左が原型とした実物(プラクティス)、右が製作したレプリカです。弾体と信管は、ともに実物(プラクティス)から型取りして製作しています。弾体は樹脂(レジン)、信管は低融点合金(ホワイトメタル)の鋳造です。信管には、ストライカーとバネを内部に組み込むことで、リングを抜くとレバーが跳んでいく、実物同様のギミックが再現できます。

 レバーはプレス加工が困難なため、海外からレプリカを輸入しました。セーフティリング、ストライカー、バネは戦後と同型なので、放出品のものを取り付けています。このレバーにはM10A3のスタンプを再現しています。弾体をODに着色すれば、1943年から製造がされ、第二次世界大戦でもっともオーソドックスなMk2手榴弾(Mk. IIA1)が再現できます。

 残念ながら、このレプリカは、いまだパーフェクトではありません。課題は二つあります。ひとつは、弾体の重量が軽いこと、ふたつめに、信管の強度が足りないことです。

 当初、弾体はホワイトメタルの鋳造でチャレンジしました。しかし、内部の空洞(中子)をつくるのが難しく、実物よりも重くなってしまうために、レジンに変更しています。レジンは、鉄粉を混入するコールドキャスト技法にもトライしましたが、上手くいかないため、通常のレジンキャストとせざるを得ませんでした。

 レジンは比重が小さいため、内部を埋めても実物の重量には足りません。そこで、比重が鉄よりも大きい鉛をレジンに混入することで重量を増やしています。しかし、それでも完成重量は、信管部とあわせて約350グラムです。冒頭に紹介した海外製レプリカと比較すれば重さは感じられるものの、まだ実物の重量である567グラムには足りません。重量をどのように増やすかが課題です。

 ホワイトメタルで鋳造した信管です。鋳型から抜いた直後の状態です。ここから、ひとつひとつ加工の処理をして、ようやく出来あがります。

 質感は非常によく、バネとストライカーを組み込めば、実物と同様の機構となります。法令に抵触しないよう、起爆筒の部分は密閉する形で製作しています。

 上が製作したレプリカ、下が実物です。レプリカにダミーの起爆筒をつけた様子です。実物には起爆筒の残骸がついています。実物は、実爆による使用や不活性化処理で起爆筒が失われていますから、コレクターが目にする機会はほとんどありません。このようにダミーの起爆筒を再現すると、手榴弾が作動する仕組みを、より明確に理解できると思います。

 レプリカ信管の課題は強度です。圧力をかけて密度を高めるダイキャストの製法とは異なり、DIYの流し込みによる製法のため、密度が低く、強度が足りません。固いものの上に落としたり、力を入れてひねったりすると、割れたり欠けたりします。当然、野外で投げることもできません。

 強度不足は、実物同様の構造とギミックの再現にこだわらなければ解決できます。課題というよりも、DIYの限界といえるかもしれません。

 ふたつの課題の解決は、なかなか困難な気がします。仮に製法を変更したとしても、根本的な解決は難しいでしょう。今回製作したMk .IIA1手榴弾のレプリカは、リエナクトメントでは装着、コレクションとしては置物に限っての利用になりそうです。

免許あります。ペーパーです。

経験も資格もないのに、爆薬の講釈をするのは恥ずかしいので、一般市民でも得やすい資格をとりました。昨年のことです。

 甲種火薬類取扱保安責任者という資格です。神戸にいたときに取得したので、免状は兵庫県知事名です。月1トン以上の爆薬や火薬を消費(発破)できます。爆薬や火薬の種類は問いません。扱えないのは銃刀法に規定する銃用雷管ぐらいでしょうか。

 免許は終身ですが、実務に就くには、免許とは別に保安手帳というものの交付を受けたうえで、定期講習の受講が義務づけられています。実際に爆薬を扱うわけですから、事故を防止するためにも定期的なフォローアップが必要だからです。

 フォローアップのための講習は、保安教育講習というものです。新規に免許を取得したときに手帳の交付を受けた場合は、この保安教育講習を受けたものと見なされます。自分は実務に就く予定はないですが、せっかくの機会ですから手帳の交付を受けました。なので、資格としては、いつでも発破ができます。

 ただ、実際に発破するには、かなりの手順を踏まないとできません。発破を予定する土地の地元消防と相談して、行政(都道府県)から消費と譲渡の許可が下りてから爆薬を購入し、保管や輸送、現地で安全基準にもとづく処置などをおこなう必要があります。

 消費と譲渡の許可は、採掘や工事などの理由であれば下りやすいと思います。昔は開墾で木の根をダイナマイトで爆破して抜根していたらしいですが、いまはほとんどないでしょう。劇用などでは入念な調整が必要だと思います。実績や経営体制も審査の対象になるはずです。許可条件以外での消費はもちろん違法です。

 保安教育講習は2年度の更新制です。自分は昨年度に免許を取得したので、来年末が更新期限です。失効させないためには来年度中に講習を受講しなくてはいけません。受講にはそれなりの金額もかかるので、実務に就く予定がない人には、あまり意味がありません。

 ミリタリーの視点からすると、本職以外で免許を取得する意味はありませんが、爆薬(火薬)に関する正しい知識が得られること、それを資格という形で示すことができるので、関心がある人にはお勧めです。受験資格はありません。免許取得だけで手帳の交付を受けなければ、受験料と合格後に免状を申請する費用以外に継続した費用負担もありません。

 試験は毎年1回、秋頃に開催されます(2020年は新型コロナウィルスの影響で年末に変更されたようです)。試験内容は、法令と一般火薬学から出題されます。それぞれ20問です。正解を選ぶマークシート方式で、合格ラインは6割正解です。合格率は毎年受験者の2割弱のようですが、過去問から多く出題されるので、ある程度、時間をかけて対策をすれば、誰でも合格できます。

 受験対策のテキストは複数ありますが、業界で評判が良いとされているのは、“香川本”と呼ばれる過去問集とCD付きのテキストのようです。香川県砕石事業協同組合が発行しているものです。自分もこのテキストで受験対策をしました。いまもたまに見返したりしています。

 なお、小規模でも爆薬や火薬の製造(素材からの製造だけでなく、既製品の改造も含む)に該当する場合は、火薬類製造保安責任者(甲・乙・丙いずれか)の資格を取得している必要があります。

 火薬類製造保安責任者の資格のうち、甲・乙は、すべての爆薬と火薬の製造にかかわることができます。丙は、主として花火の製造にかかわることのできる資格です。甲・乙を取得した場合には、甲・乙それぞれに該当する取扱保安責任者の資格が無試験で申請により得られます。

 甲・乙の火薬類製造保安責任者試験は、取扱保安責任者試験にある法令と一般火薬学にくわえて、製造方法や試験方法、工場管理、電気・機械工学などの項目が追加されています。原料を含む知識が問われますから、より見識を深めたい方は、製造保安責任者試験の受験を検討されてもよいかと思います。詳しくは、公益社団法人全国火薬類保安協会のホームページか、お住まいの各都道府県火薬類保安協会の案内をご覧ください。

迫撃砲弾のダミー信管をつくる。(未完)

60mm迫撃砲の再現をするにあたり、砲弾のレストアに着手しています。亀のようなのろさですが。榴弾に装着する信管を再現しました。

 昨年3月のブログ記事「 ヤフオク入手の不思議ちゃん60ミリ照明弾を再生させる。(未完) 」で書いたように、60mm迫撃砲弾のうち、まずはレストアのハードルが低い照明弾から手がけることとして、弾体の塗膜を落としました。その後、神戸へ一時転居するなどしてペンディング状態でしたが、京都に住む知人(自分はスーパーマンと呼んでいる)から、ありがたいことに、設備の整った彼の工場で砲弾をレストアすることを提案いただきました。

 そこで今年2月に自宅へ戻ったタイミングで、塗膜を落とした照明弾と未着手の榴弾をまとめて京都の工場に送りつけたはいいものの、新型コロナウィルスの蔓延でレストア作業が延期となり、今もまだお互いの日程調整すら出来ていない状況です。その後にまた鉄屑数発が手許にやってきたりして、いったいレストア対象の砲弾が何発あるのかすら、よくわかりません。

 とはいえ、何もしていないわけではなく、榴弾のダミー信管の製作に取りかかっています。照明弾には信管が残っていますが、榴弾には完全な形の信管が1つしかありません。榴弾をレストアするならば、そのときにつける信管がないと、格好もつきません。

 60mm迫撃砲の榴弾M49A2のイラストです。榴弾用の信管は、81mmと共用の着発信管M52シリーズです。第二次世界大戦時のM52シリーズには、アルミ製のA1、ベークライト製のB1、アルミ製とベークライト製の部品が組み合わさったB2の三種類があります。今回は戦時中に資源節約の目的で採用されたベークライト製M52B1を再現することとしました。以前に再現したレプリカの射表もB1のものなので、ちょうど良いです。

 この写真は、81mm迫撃砲チームの射撃風景です。次弾を渡そうと立っている兵士が右手に持っている砲弾にはベークライト製のM52B1信管がついています。座っている兵士が手にしている砲弾は右手がアルミ製のM52A1信管、左手はアルミ製で初期型のM52信管がついています。アルミ製とベークライト製の部品が組み合わさった信管は、写真右下の集積された砲弾のなかに確認できます(実はこの信管がちょっと謎なんですが…)。榴弾の信管種別は、野戦において顧慮されていなかったことがうかがえます。

 戦後の軍需部資料にあるM52A1信管の図面です。右下の記録欄にあるように、1939年に制定されてから数回の変更がありましたが、基本的な構造に変更はありません。ベークライト製のM52B1信管は、ストライカーを支えるヘッドとベースとなるスレッド部分をアルミからベークライトに置き換えたものです。図面のアルミ製A1と構造は同じで、外観の形状もほとんど同じです。そこで、手許にあるA1の実物を型取りし、ヘッドとスレッドは黒色のレジンで、頭部のストライカーはホワイトメタルの鋳造で作成することとしました。

 試作品です。セーフティワイヤーの位置が本来とは異なります。これはアルミ製のA1とベークライト製のB1の違いです。写真は修正前のものです。内部の撃針は再現していませんが、ヘッド内にバネを仕込むことで、ストライカーは実物と同じように動きます。ここまでつくるのに、かなりの試行錯誤がありました。

 実物から型取りしているので当然ですが、放出品の砲弾にしっかりと装着できます。M52シリーズの信管は81mmとも共用なので、このように81mm砲弾にもしっかりと装着できます。

 試作品では、弾体の炸薬を爆轟させるための起爆薬(ブースターカップ)も分離できるようにつくっていますが、実物の砲弾は信管を装着した形で梱包されて戦地に送られます。戦地において、なんらかの理由で砲弾から信管を外すことはあっても、信管から起爆薬を分離することは基本的に想定していません。実際、起爆薬の螺着部は信管にセメントで密封されています。そこで分離できるタイプは試作品のみとし、ほかは取り外し不可の一体成形としました。


 写真は手前が試作品、奥に並んでいるのが一体成形のものです。レストア対象の榴弾はたしか10発程度はあったと思うので、それにあわせて型抜きをしています。レジン成形時の気泡による欠けがすこし見られますが、自分たちでリエナクトメントに使用するには許容範囲の出来でしょう。ヘッドは実物同様に外れるので、ストライカーは組み込むことができます。ストライカーはホワイトメタル製ですが、強度は申し分なさそうです。

 タイトルに「未完」とあるように、ダミー信管の完成までに残る作業として、真鍮製の安全栓と螺旋蓋の製作があります。真鍮は鋳造の温度が高く、自作が難しいため、専門業者に依頼する形を考えています。

WW2米海兵隊60mm迫撃砲チームの活躍を描いたHBOのテレビシリーズ「The Pacific」はアマゾンプライムビデオにラインナップされています。プライム会員であれば無料で視聴できます(2020年10月2日現在)。年会費も手頃でオススメです。

H鋼を破壊するのに必要な爆薬量と設置方法

爆薬を見たことも触ったこともないのに例示物をつくるのが変人といわれる所為です。

 一昨日に浅草で開催されたサムズミリタリヤさん主催のビクトリーショーで、WW2米軍工兵・衛生資器材の展示をおこないました。

 今回の展示で、自分は主に破壊器材(爆薬)を担当しましたが、観覧いただいた方に、より身近に感じてもらえるような2つの展示をおこないました。1つは爆薬の起爆には雷管が必要であること、もう1つは爆薬量の計算と設置方法についてです。ともに解説のパネルと実物大模型による例示物を作成しました。

 爆薬を取り扱う仕事を経験している方にとって、この2点は基本というか常識です。しかし、以外と一般には知られていないというか、仮に知識があっても具体的なイメージがつかみづらいのではないかと思います(自分自身はそうでした)。

 そこで、説明用のパネルとともに模型による例示物をあわせて展示することで、視覚的に理解しやすいような内容にしました。おかげさまで見学者の方から「今までモヤモヤしていた部分が解消できました」というお声もいただきました。狙いどおりです♪

 以下では、爆薬量の計算と設置方法について、パネルの内容と作成した模型をご紹介します。

 こちらが当日のブースでも展示したパネルの内容です。米軍の破壊爆薬教範(1945年版「FM5-25」)にある計算式を用いて、H鋼の破壊に必要な爆薬量を計算し、それに見合うコンポジション爆薬を設置するというものです。

 展示パネルには「求めてみましょう」と計算を促していますが、特に解答を用意していませんでしたので、ここで答えあわせをしたいと思います。

 計算式は、H鋼の質量を計算し、破壊するにあたって必要な爆薬量を係数「3/8」を掛けて求めます。質量の計算単位はインチで、爆薬量の単位はTNT換算のポンドです。

 まずはH鋼の質量を求めます。下記の計算式【1】~【4】はパネルの水色の番号に該当します。

鋼材質量を求める計算式:2×【1】鉄骨の上辺下辺の幅(70mm)×【2】同厚さ(7mm)+【3】鉄骨中央柱の高さ(150mm)×【4】同厚さ(5mm)

 計算がしやすいように、すべてインチになおして計算してみます。

ミリをインチに換算した計算式:2×【1】2.76×【2】0.276+【3】5.91×【4】0.197=2.689平方インチ

 2.689に係数3/8を掛けると、破壊に必要な爆薬量はほぼ1ポンドぴったりです。ちょうどTNTハーフポンド爆薬2個分です。WW2当時のコンポジション爆薬(C-2)は、重量換算でTNTの約1.3倍の威力がありますので、必要な爆薬量は0.77ポンド、およそ350グラムということになります。

 設置方法は、教範に掲載されているように、当て板で対象面に密着させ、麻紐で縛着する形を再現しました。形状やつかう爆薬量を調節しやすくしたのがコンポジション爆薬の優れた点ですね。

 こちらが教範の設置例を再現した模型です。H鋼は鋼材屋さんから切り出してもらいました。コンポジション爆薬は色・質感が近い紙粘土をつかいました。紙粘土は、比重が爆薬と異なります。そこで模型では、概ねコンポジション爆薬350グラム分に相当する体積である280立方センチを目安に製作しています。

 起爆は電気式を再現し、電気式雷管に見立てたコード付きの銅管を挿入しています。

 今回の模型に近い実爆を経験した有資格者から爆薬(=紙粘土)の量が少し多くない?と指摘されましたが、現代のコンポジション爆薬はより少ない量でも破壊できるように改良されているのではないかと思います。「 こんなものは自衛隊の教材以外にないのでは?」という声も聞きました。自分にとっては褒め言葉です。

M1919機関銃用の木箱を再現する。

WWII時代にミシガン州サギノーのGM工場で生産されたM1919A4が工場出荷された時の木箱を再現しました。

 ブローニングM1919機関銃用の木箱は海外でもDIYが盛んです。ネットで調べると、だいたい銃と三脚と弾薬箱が一緒に入ってキャスターが付いている。射場への持ち運びしやすい利便性を重視しているのでしょう。

 撃つ必要のない無可動。ここはやはりオリジナルに近い形で再現したい。ただ、戦地では基本的に機関銃の木箱は、保管収納する必要がある艦船を除けば軍用としては存在しません。唯一、工場出荷時のものがあるだけです。その木箱も戦地では薪や木工材料として解体使用されたでしょうから、現存するものはほとんどないようです。

 地上戦用として出荷された機関銃の木箱で確認できるのは2種類あります。縦置きで収納するタイプと横置きで収納するタイプ。縦置きタイプは戦中で、横置きタイプは戦後バージョンです。今回は縦置きタイプを製作しました。

 ステンシルはミシガン州サギノーにあったゼネラルモーターズの工場で生産されたM1919A4用の木箱を再現しています。「30 BMG」「M19A4」「MICH」など、文字が省略されているのは実物に倣った通りです。

 ところで、銃身に対して木箱が大き過ぎるのでは?と思った人は勘がいいです。この木箱は水冷式M1917機関銃と共用でした。第二次世界大戦後に水冷式が廃止されると、木箱はM1919にあわせて横置きタイプのスリムなものになりました。

 木箱にはかなりのクリアランスがあるため、このように二脚や属品も一緒に収納できます。

 今回製作した木箱は、無垢板の反りで隙間が目立つうえ、間仕切りも本来の溝継ぎを省略しています。出来は甘いですが…見た目の雰囲気は良いと思います。

マーキング再生は下記のブラザー社製のカッティングマシンを使っています。WWII時代のマーキングはステンシルではなくスタンプが多いので、スタンプを再現する際にカッティングマシンは重宝します。