60mm迫撃砲の再現をするにあたり、砲弾のレストアに着手しています。亀のようなのろさですが。榴弾に装着する信管を再現しました。
昨年3月のブログ記事「 ヤフオク入手の不思議ちゃん60ミリ照明弾を再生させる。(未完) 」で書いたように、60mm迫撃砲弾のうち、まずはレストアのハードルが低い照明弾から手がけることとして、弾体の塗膜を落としました。その後、神戸へ一時転居するなどしてペンディング状態でしたが、京都に住む知人(自分はスーパーマンと呼んでいる)から、ありがたいことに、設備の整った彼の工場で砲弾をレストアすることを提案いただきました。
そこで今年2月に自宅へ戻ったタイミングで、塗膜を落とした照明弾と未着手の榴弾をまとめて京都の工場に送りつけたはいいものの、新型コロナウィルスの蔓延でレストア作業が延期となり、今もまだお互いの日程調整すら出来ていない状況です。その後にまた鉄屑数発が手許にやってきたりして、いったいレストア対象の砲弾が何発あるのかすら、よくわかりません。
とはいえ、何もしていないわけではなく、榴弾のダミー信管の製作に取りかかっています。照明弾には信管が残っていますが、榴弾には完全な形の信管が1つしかありません。榴弾をレストアするならば、そのときにつける信管がないと、格好もつきません。
60mm迫撃砲の榴弾M49A2のイラストです。榴弾用の信管は、81mmと共用の着発信管M52シリーズです。第二次世界大戦時のM52シリーズには、アルミ製のA1、ベークライト製のB1、アルミ製とベークライト製の部品が組み合わさったB2の三種類があります。今回は戦時中に資源節約の目的で採用されたベークライト製M52B1を再現することとしました。以前に再現したレプリカの射表もB1のものなので、ちょうど良いです。
この写真は、81mm迫撃砲チームの射撃風景です。次弾を渡そうと立っている兵士が右手に持っている砲弾にはベークライト製のM52B1信管がついています。座っている兵士が手にしている砲弾は右手がアルミ製のM52A1信管、左手はアルミ製で初期型のM52信管がついています。アルミ製とベークライト製の部品が組み合わさった信管は、写真右下の集積された砲弾のなかに確認できます(実はこの信管がちょっと謎なんですが…)。榴弾の信管種別は、野戦において顧慮されていなかったことがうかがえます。
戦後の軍需部資料にあるM52A1信管の図面です。右下の記録欄にあるように、1939年に制定されてから数回の変更がありましたが、基本的な構造に変更はありません。ベークライト製のM52B1信管は、ストライカーを支えるヘッドとベースとなるスレッド部分をアルミからベークライトに置き換えたものです。図面のアルミ製A1と構造は同じで、外観の形状もほとんど同じです。そこで、手許にあるA1の実物を型取りし、ヘッドとスレッドは黒色のレジンで、頭部のストライカーはホワイトメタルの鋳造で作成することとしました。
試作品です。セーフティワイヤーの位置が本来とは異なります。これはアルミ製のA1とベークライト製のB1の違いです。写真は修正前のものです。内部の撃針は再現していませんが、ヘッド内にバネを仕込むことで、ストライカーは実物と同じように動きます。ここまでつくるのに、かなりの試行錯誤がありました。
実物から型取りしているので当然ですが、放出品の砲弾にしっかりと装着できます。M52シリーズの信管は81mmとも共用なので、このように81mm砲弾にもしっかりと装着できます。
試作品では、弾体の炸薬を爆轟させるための起爆薬(ブースターカップ)も分離できるようにつくっていますが、実物の砲弾は信管を装着した形で梱包されて戦地に送られます。戦地において、なんらかの理由で砲弾から信管を外すことはあっても、信管から起爆薬を分離することは基本的に想定していません。実際、起爆薬の螺着部は信管にセメントで密封されています。そこで分離できるタイプは試作品のみとし、ほかは取り外し不可の一体成形としました。
写真は手前が試作品、奥に並んでいるのが一体成形のものです。レストア対象の榴弾はたしか10発程度はあったと思うので、それにあわせて型抜きをしています。レジン成形時の気泡による欠けがすこし見られますが、自分たちでリエナクトメントに使用するには許容範囲の出来でしょう。ヘッドは実物同様に外れるので、ストライカーは組み込むことができます。ストライカーはホワイトメタル製ですが、強度は申し分なさそうです。
タイトルに「未完」とあるように、ダミー信管の完成までに残る作業として、真鍮製の安全栓と螺旋蓋の製作があります。真鍮は鋳造の温度が高く、自作が難しいため、専門業者に依頼する形を考えています。
WW2米海兵隊60mm迫撃砲チームの活躍を描いたHBOのテレビシリーズ「The Pacific」はアマゾンプライムビデオにラインナップされています。プライム会員であれば無料で視聴できます(2020年10月2日現在)。年会費も手頃でオススメです。