Australian Armour & Artillery Museum Report #3

オーストラリア・ケアンズにある「Australian Armour & Artillery Museum」のレポート、最後(といってもたった3回だけですが…)は日本軍の大砲コレクションをご紹介します。

 コレクションと大層なことを申しましてもご覧のように五門だけですが、おおよそ古い順に並んでいます。左端から三十一年式速射砲(三一式山砲)、九二式歩兵砲(通称“大隊砲”)、九四式山砲、九四式三十七粍速射砲、右端が九一式一〇糎榴弾砲です。

 これ、ちょっと珍しくないですかね?日露戦争で活躍した三十一年式速射砲です。駐退機がない時代ですので、発砲時の反動で1発撃つたびにガラガラと大砲自身が後に下がってきます。ですので、実戦では後が少し坂になったところとか、こう配を作るなどして運用したようです。防盾もなくて、いかにも古くさい感じがグッドです!
 後に「三一式山砲」と改称されて、昭和期も制式兵器として残りました。日中戦争で動員が相次いで大砲が足りなくなると、倉庫から引っ張り出して前線に送られました。古すぎて使い方が分からない?ため、わざわざ歩兵学校から指導員を現地教育に寄こせという文書が残っています。終戦時に中国にいた日本軍の兵器引継書にも三一式山砲弾が記載されていますから、驚くなかれ、1945年の終戦まで現役だったわけです。
 で、この古くさい大砲がなぜオーストラリアにあるのか?太平洋のどこかで鹵獲されたものだった…とすると、ヒジョーに複雑な気分ですね。

 こちらは九二式歩兵砲。一個歩兵大隊で二門ずつ運用したので“大隊砲”と呼ばれました。作戦行動をとる際に大隊レベルで運用可能の火力支援があるというのは良いことのように思いますし、日本の特徴がよく出た兵器で好きなもののひとつですが、いかんせん、あまりにもチャチに見えて(さらに砲弾の命中精度があまりよくないという意味で)“大体砲”という陰口もあったそうです。70ミリの短砲身だと対戦車攻撃には非力で、特に南方戦線ではジャングル地帯で射界を確保するのも困難、分解搬送も迫撃砲に比べて労力が必要だったのではないでしょうか?


 この九二式歩兵砲は砲口が閉塞されておらず、ご覧のように閉鎖機もついたままなので、もしかしたらライブかもしれません。

 九四式山砲です。口径は75ミリ。この砲の採用により、旧式の四一式山砲は順次歩兵連隊に移管され、太平洋戦争の頃には山砲連隊は本砲を装備していたようです。

 九四式山砲を後ろから見た様子です。山本七平がルソン島でこの砲を二門率いた戦砲班の機動指揮をとったエピソードが思い出されます。

 九四式三十七粍速射砲はスルーして(すみません。写真を撮り忘れました…)、お次は九一式一〇糎榴弾砲。口径105ミリ。元はフランスのシュナイダー社が開発した砲で、初年兵教育で十榴中隊に配属された山本七平が日本軍の兵器体系のちぐはぐさに気がついたきっかけの砲ですね。

 最後に、各国の手榴弾が展示されたガラスケースにあった日本軍の手榴弾です。4つありますねぇ。右から九七式、九一式(擲弾筒兼用)、九九式(いわゆる“キスカ”型)、最後に二十三式……って、ちょっちょっとお待ちを!この写真を撮ったときはぜんぜん気がつきませんでしたが、この左端の手榴弾はコレクターの間で幻の品とも言われる(?)「二三式手榴弾」ですね。元々は日本軍のものではなく中国軍(蒋介石軍)が採用した手榴弾で、中華民国暦23年=1934年制式のものです。
 日中戦争で日本軍は中国軍から大量に鹵獲した兵器を日本軍の装備として再支給しています。制度的には準制式の手続きをとって制式兵器に準じる形で採用したものと、そのような手続きを経ずに現地裁量?で「代用兵器」として利用した二通りがあります。この二三式手榴弾は、終戦時に中国・朝鮮にいた部隊の兵器引継書に「二三式手榴弾」とありますので(代用兵器の場合は「代用手榴弾」と記載)、おそらく準制式の手続きがとられたのではないかと思います。
 南方戦線に派遣された部隊にもかなりの量が支給されていたようで、米軍の教範にも日本軍の手榴弾として紹介があります。ですから、このように日本軍の手榴弾として紹介するのは“当たらずと雖も遠からず”といったところでしょうか。

というわけで、オーストラリア・ケアンズにある軍事博物館「Australian Armour & Artillery Museum」をざっくりとご紹介しました。館内の滞在時間が約20分程度だったので、見落としたものも多いかと思います。ケアンズに行かれる際はぜひお立ち寄りください(スカイレール観光のついでならばご家族の理解も得られやすいですし)。

大ベストセラー『ユダヤ人と日本人』で知られる山本七平は、戦前に砲兵将校としてフィリピン戦線に従軍しています。この本では山本が入営前から終戦、帰国にいたるまで、日本軍で体験した様々な経験が独特の目線で綴られています。日本軍=日本社会の縮図がよくわかる、類を見ない良書だと思います。

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