ロサンゼルス郊外のちいさな田舎町にある、(おそらく)世界でもっとも有名な軍用機博物館を2018年に訪れました。
2年前に息子とカリフォルニアにトレッキング旅行をしたときに、チノの航空機博物館“プレーンズ・オブ・フェイム”(Planes of Fame)を訪問しました。211マイル(約340km)に及ぶジョン・ミューア・トレイル(John Muir Trail)を、見込みよりはるかに早く踏破して、帰国予定日まで4日間ほど観光できる余裕ができたためです。当初は機関銃が撃てるラスベガスに行こうかと思っていましたが、息子が海を見たいというので南下してサンディエゴへ行くこととし、その途中に博物館へ立ち寄ることにしたわけです。
プレーンズ・オブ・フェイムは、ロサンゼルス郊外のちいさな田舎町にありますが、おそらく、軍用機に興味のある方なら必ず知っているであろう、世界的にも有名な航空博物館です。ここの博物館が有名なのは、戦前のレシプロ機を中心に、多くの機体を稼働状態(Flyable)で所有していることだと思います。そのなかには世界で唯一の機体もあります。オリジナルの栄エンジンで飛行可能な零戦52型もそのひとつです。
この写真は、プレーンズ・オブ・フェイムが所有する零戦が2013年に来日し、埼玉県の所沢航空記念公園でお披露目されたときに撮影したものです。映画「永遠の0」(→Amazon.co.jp)で零戦にはまった息子(当時5歳)を連れて参観しました。このときはまさか5年後にチノで再会するとは思っても見ませんでした。
こちらは2018年にチノを訪れたときの同機です。息子は所沢まで見にいったことを憶えていませんでした。小さかったから無理もないですね。
プレーンズ・オブ・フェイムが保有する零戦52型61-120号機は、終戦前年の昭和19年(1944年)に中島飛行機で製造され、海軍戦闘機隊261空の一機としてサイパンに進出。同島陥落時に米軍が滷獲した機体ということです。
この写真は、米海軍がサイパンで撮影したもので、接収した零戦を本土へ向けて搬出する作業の様子です。このとき、零戦12機がほぼ無傷の状態で接収されたといいます。兵器機材は敵手に陥る前に破壊するのが各国共通の慣わしです。このときはなんらかの理由でそれができなかったわけです。米軍はこれら接収した零戦を空母に積載して本土に移送し、性能試験をおこなったといいます。12機のうち現存するのは3機、そのうちの1機がチノのプレーンズ・オブ・フェイムが所有する61-120号機です。
プレーンズ・オブ・フェイムの61-120号機が飛行可能な状態に復元されたのは1970年代半ばで、すでに半世紀を経ています。さすがにエンジンはオリジナルのままというわけにはいかず、部品は新造品で交換したり、安全飛行のために別のレシプロ機から調達した機器で追加の改修などもおこなわれているようです。しかし、オリジナルの機体とエンジンで飛ぶ唯一の零戦ということで、いまも同博物館の目玉コレクションとして人気を博しています。
2019年末からの新型コロナウィルス蔓延で、同博物館も長期の休業と年に1回のエアショーも中止を余儀なくされましたが、徐々にイベントは再開しつつあるようです。本稿の執筆時で直近のイベントとして、2020年12月5日に、61-120号機の飛行が予定されています。
2018年に訪れたとき、チノでは隔週で週末に展示飛行のプログラムがあったと思います。残念ながら私たちが訪れた日は平日で展示飛行はありませんでした。また、バックヤードツアーもなかったので、旧軍機でレストア中の九九式艦爆にお目にかかることはできませんでした。旧軍機で参観できたのは、零戦、雷電、彗星艦爆、秋水、桜花です。
プレーンズ・オブ・フェイムのコレクションについては、次の記事で写真を中心にご紹介します。
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