“日米従兄弟”81mm迫撃砲弾

フランスのストークブラン式迫撃砲は各国で採用され、日本とアメリカもほぼ同じ型で同じ口径の砲弾をつかう歩兵兵器として採用されました。

 米軍の対日戦教範に掲載されている日米の81mm迫撃砲を比較した写真です。左が日本軍の九七式曲射歩兵砲、右が米軍の81mm迫撃砲M1です。ともにフランスのストークブランMle27/31を元にしたモデルで、砲はほぼ一緒で口径も同じです。砲弾はそれぞれ相互につかうことができます。

 墜発式の迫撃砲は、持久ガスの撒毒につかう化学兵器としての役割もありますが、本砲は日米ともに歩兵の戦闘を支援する歩兵砲として装備されました。第一線の歩兵中隊を直接支援する歩兵大隊に装備されているのも同じです。編制上は、日本軍が大隊歩兵砲小隊において二門を運用し、米軍は大隊重火器中隊において三門を運用することとされています。

 今回再生した日米の“従兄弟”81mm榴弾です。左が日本軍の九八式榴弾、右が米軍のHE, M43A1です。この写真では信管はついていません。弾体のみです。日本軍の九八式榴弾は1941年11月に製造されたタイプを再現しています。米軍のM43A1は1943年後半以降に製造されたタイプを再現しています。

 弾体の形状はよく似ています。ガスチェックバンドはともに4条で位置も同じです。弾体の高さは信管座を含めると日本軍のほうがやや高くなります。

 信管はともに着発信管で、弾体の先端に羅着で取り付けます。ネジ径がずいぶん違いますが、これは日本軍の砲弾には信管座がついているためです。本来の弾体のネジ径は米軍に近いと思います。米軍では信管と弾体はセメントで密封します。日本軍はワニスを塗布するようです。

 ところで、米軍では、81mm迫撃砲の榴弾には軽榴弾(M43A1)と重榴弾(M56)の二種が採用されています。軽榴弾は瞬発信管、重榴弾は遅延信管をつかいます。遅延信管は砲弾が地中にもぐった後に起爆するタイプで掩体などの破壊につかいます。日本軍も九七式曲射歩兵砲の採用審査をしたときは軽榴弾と重榴弾の二種を審査した旨が記録に残っていますが(→アジア歴史資料センターRef. C01001748500)、採用は軽榴弾のタイプのみだったようです。ただし、信管には瞬発と遅延の切り替えが可能な二働信管を採用しています。

 尾翼の羽根はともに6条です。推進薬のカートリッジサイズは散弾12番です。米軍の砲弾は雷管を内蔵したカートリッジキャップがついていますが、初期の砲弾(M43)は日本軍と同じくキャップなしで、撃針はカートリッジの雷管を叩いて発射する仕組みです。射距離を延ばす増分は羽根の数と同じ6個です。

 米軍のレポートに掲載されている射距離の比較です。“JAP AMMUNITION”とあるのは、九七式曲射歩兵砲につかう九八式榴弾もしくは一〇〇式榴弾です。米軍よりも射程が1割短いことがわかります。

 同レポートには、日本軍の九七式曲射歩兵砲の射表も掲載されています。この射表をつかい、滷獲した砲弾を敵陣に撃ち込むこともおこなわれたようです。

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