カートリッジ・ベルトのポケットすべてに弾を入れてはいかんのや。

弾帯にポケットがあれば、そこに弾が入ると思うのは人情というもの。

 アモカンのマーキングに続き、過去の不勉強を訂正するのが今回の記事の主旨です。

 需品部(QMC)の備品カタログに掲載されているイラストです。WW2米軍の小銃用弾帯であるカートリッジ・ベルト(BELT, CATRIDGES, CAL. .30, M-1923)が紹介されています。上の“DISMOUNTED”とあるのが徒歩行軍の歩兵用、“MOUNTED”とあるのが騎兵用です。この弾帯が採用されたときのサービス・ライフルは、手動装填式のM1903ライフルですが、のちに自動装填式のM1ライフルが採用されたあとも、この弾帯はそのまま使用が継続され、1945年の戦争終結までつかわれました。

 3年前に、M1ライフル用の弾帯と布製の簡易弾帯(バンダリア)に、金属製で8発用の挿弾子(クリップ)とダミーカートをいっぱいにつめたときのツイートです。嬉しそうですね。無知ってこわいですね。

 ツイートしたときにつかった弾帯は、あまり再現度の高くないレプリカでしたが、その後、実物を入手しました。自分は被服装備に関心が薄く、目が節穴なので、実物ならばイベントで一緒に活動する仲間に迷惑をかけないだろうと考えたからです。なお、今は再現度の高い良質のレプリカをつかうべきという考えです。

 実物は、ものによって一世紀近い年月が経っていますから、経年による劣化を免れません。筆者が所有する弾帯も、留め金が外れたり(写真左)、ベルトに破れが生じたりしています(写真右)。そもそも古くて見た目もよくありませんし、レプリカに更新しないといけないですね。

 本題にもどります。

 弾帯には、ポケットが10個ついています。弾帯ゆえに、ポケットの数だけ、弾薬が入ると思い込んでしまいますが、実際にはそうではありません。

 筆者が所蔵するフォートベニング歩兵学校の資料には、歩兵連隊が装備する火器1丁あたりの弾薬定数が掲載されています。下記はその弾薬定数表から、ライフル中隊小銃小隊が装備する火器について抜き出したものです。

  • Carbine, cal. .30, M1 個人携行数【60】、段列携行数【0】、合計【60】
  • Rifle, cal. .30, M1 個人携行数【48】、段列携行数【96】、合計【144】
  • Rifle, cal. .30, M1903A4 個人携行数【40】、段列携行数【120】、合計【160】
  • Rifle, Auto, cal. .30, M1918A2 (BAR) チーム携行数【380】、段列携行数【360】、合計【740】

 ここにいう個人携行数とは、行軍時に兵士が携行する弾数になります。攻撃時には、必要に応じて段列から追加の弾薬を受領します。段列携行数とは、この火器1丁あたり追加で支給可能な予備弾薬を示します。簡易弾帯(バンダリア)や紙箱で輸送します。

 M1ライフルの弾薬定数をみてみましょう。個人携行数はわずかに48発です。M1ライフルは、8発入りの挿弾子(クリップ)を装填につかいますので、6装填分ということになります。弾帯のポケットは、1ポケットに1クリップが入りますから、ベルトのポケット10個のうち、6つを弾薬入れとしてつかうことになります。定数上は、すべてのポケットに弾薬を入れないわけです。

photo by 太郎丸

 徒歩行軍の装備を身に付けた様子です。実際に規定の装備を身に付けてみると、弾帯で後ろ側に位置するポケットは、ほかの装備品の干渉もあり、自分の手でポケットから弾薬を取り出すことは困難です。弾薬を入れるポケットは、取り出しやすい前側の左右6つのポケットになるでしょう。なお、簡易弾帯(バンダリア)は装備の上からたすき掛けにしますから、出し入れの不便はありません。

 先ほどご紹介したとおり、もともとこの弾帯は、M1903ライフル用として採用されています。M1903ライフルは、弾薬を5発の挿弾子で装填します。弾帯のポケットは、5発クリップを2つ入れるようにつくられています。フラップが付いているのは、1つの挿弾子を取り出すときに、もう1つの挿弾子が一緒に出てきて、取り落とさないようにするためです。

 先ほどの弾薬定数では、M1903A4(狙撃専用銃)は個人携行数が40発となっています。これは5発クリップで8回の装填分になります。弾帯では4つのポケットをつかう計算になります。M1ライフルと同じように、前側の左右のポケットをつかうと考えてよいと思います。

 弾帯で弾薬が入るポケットは、M1ライフルでは6ポケットだけです。M1903A4ライフルではさらに少なく4ポケットだけです。それでは、弾薬が入らない残りのポケットには、なにが入るのでしょうか?

 軍需部(ORD)が発行する備品カタログリストに掲載されているM1ライフルの属品です。弾薬の装填につかう挿弾子や負い革(スリング)を除くと、基本的には小銃の手入れにつかう物品となります。なお、ここには消耗品は掲載されていません。

 装薬銃は、射撃後に銃控の清掃が不可欠です。火薬が燃焼した際に出るガスが金属製の銃身を腐食させるからです。また、雨滴による腐食や、砂塵などの異物による動作不良を防ぐためにも、頻繁な手入れが必要です。兵士にとって銃の手入れは、兵士である限り常につきまとう面倒な仕事であり、手入れにつかう道具も常に携行していなければならない装備品でした。

 部隊管理品と考えられる工具類を除いたうえで、小銃野戦教範(FM 23-5)及び小火器整備技術公報(TB 9-2835-9)に記載の内容から判断すると、兵士個人が携行する小銃手入れ具の属品と用品(消耗品を含む)は、以下のようなものになると考えられます。

  1. BRUSH、THONG、CASE #清掃具 ※グリースを含む。小銃の銃床内に収納。
  2. TOOL #多機能工具 ※薬莢抜きを含む。小銃の銃床内に収納。
  3. SPARE PARTS #予備部品 ※小物入れに収納。
  4. BORE CLEANER #洗浄液
  5. LUBRICATING OIL #潤滑油
  6. DRY PATCHES #拭き布 ※防水紙封筒に収納。

 M1ライフルは、床尾から銃床内に清掃具と多機能工具を収納できます。上記のリストで【1】と【2】にあたるものです。それらを除いた物品と用品をならべたものがこちらの写真になります。右から順に、予備部品を入れる小物入れ、潤滑油(油缶)、洗浄液(使い捨て缶)、拭き布です。ちょうど、弾薬が入らない4つのポケットに収納できます。弾帯でこれらの手入れ具を携行したわけです。

 筆者が所有する弾帯は、右側の一番後ろに位置するポケットが黒ずんでいます。洗浄液を入れていたのかもしれません。

 軍曹(Msg. Merwin J. Toome)が所有するコレクションで再現してくれました。簡易弾帯2本が段列から支給され、弾薬定数の上限である144発の小銃弾を携行する攻撃時の装備です。当時の小銃兵が携行する武器用品が揃っています。

 弾帯には、さきほどご紹介した内容のものが、側背側の4つのポケットに収まります。左側から順に、拭き布、洗浄液、潤滑油(使い捨て缶)、予備部品を入れる小物入れです。なお、簡易弾帯の左側にあるさく杖(クリーニング・ロッド)は、すべての兵士が個人携行するのではなく、分隊で装備していたかもしれません。

 本稿では、フォートベニング歩兵学校の資料に掲載されている弾薬定数をもとに、小銃用弾帯のポケットに入る弾薬の数と手入れ具について検討しました。手入れ具としてご紹介したものは、現時点では、あくまでも推測になります。今後、資料をもとにアップデートできればと思います。もしご存知の方がいらっしゃれば、ご教示いただけますと幸いです。