いろいろと奥が深い。Mk. II手榴弾。#2(信管編)

前回の記事では、Mk2手榴弾の変遷と、弾体の形状についてご紹介しました。今回は信管について大戦型と戦後型という区別で見ていきたいと思います。

 ところで、昨年4月にブログで「爆薬の起爆に必要な雷管と伝爆薬」を掲載した際に、記事の末尾で「砲弾や手榴弾の伝爆薬については、次の機会にご紹介したいと思います」としたままでした。今回、Mk2手榴弾の信管とあわせて、手榴弾の伝爆薬(起爆筒)についてもご紹介します。

 

 WW2の米軍歩兵が手にする最もオーソドックスなMk2手榴弾である無煙火薬タイプ(左)と、改良型のTNTタイプ(右)です。信管は、無煙火薬タイプがM10シリーズ、改良型がM6シリーズです。信管の形状はまったく同じです。 信管を弾体に装着すれば、外観の違いはレバーにあるモデル名の刻印だけです。

 筆者が製作したレプリカです。M10シリーズとM6シリーズの信管は本体とレバーは共通ですが、モデルが違いますので、天頂部の刻印やスタンプが異なります。WW2では、おおむね初期が打刻、後期がスタンプでした。レプリカではスタンプで再現しています。

 筆者が製作した信管と起爆筒のレプリカです。信管は実物を型取りして、ホワイトメタルの鋳造で製作しました。左がM10シリーズ、右はM6シリーズの信管です。両方とも下のほうに付いているのは、炸薬を起爆されるための起爆筒です。

 M10シリーズは起爆筒をイグナイター、M6はデトネーターと区別します。この区別は、炸薬に起爆するために火薬をつかうか、爆薬をつかうかの区別です。

 イグナイターとデトネーターの外観上の違いは、金属製の起爆筒の長さとシーリング剤です。起爆筒の長さは填薬量の違いです。イグナイターは黒色火薬が7gr(0.45g)ですが、デトネーターは無煙火薬とテトリルで合計20.5gr(1.33g)です。シーリング剤は、イグナイターが緑、デトネーターには赤が塗られていました。実物の放出品は、使用済みもしくは不活性化処理済みなので、起爆筒はほとんど出回りません。目にする機会もないと思います。

 信管には、銃用とほぼ同じ構造の雷管と、その下には導火線が充填されています。安全環を引き抜くと、レバーが外れてバネの力でストライカーが回転し、雷管を叩きます。雷管の発火で導火線に着火します。おおむね4~5、6秒かけて起爆筒まで火が達すると起爆筒が爆発し、弾体内の炸薬に爆轟を伝えます。

 筆者が製作したレプリカの手榴弾信管で、起爆の仕組みを説明します。Mk2手榴弾の信管は、この写真で示したように10点で構成されています。①~④が外から見えるもので、⑤~⑩が中にあって見えないものです。

 まず、安全環③を引き抜くと、レバー②が外れます。レバーが外れるとバネ⑦の反発でストライカー⑥が回転し、雷管⑨を叩きます。導火線⑩に着火すると、4~5秒後に火が起爆筒⑤に達して起爆し、弾体内の炸薬を爆轟させます。

 前回の記事でご紹介したように、起爆の仕組みそのものは、Mk2手榴弾が登場した1918年からかわっていません。戦後もほとんどかわっていません。シンプルですが、非常に信頼性が高い方式であるといえます。

 信管の仕組みと機能から、リエナクトメントにとって重要な形状に話をもどしましょう。

 Mk2手榴弾は、1944年に炸薬を無煙火薬からTNTに変更した際に信管部も改良され、新型が登場しています。写真は左が従来のM6、右が新型のT2E1(後のM204)です。信管本体の形状は大きくかわっていませんが、レバーの引っ掛かりが上下逆向きになりました。 M6はレバーの先端が信管のつばに対して下向きにわん曲して引っ掛けていたのが、新型では二又で下から上向きにわん曲して引っ掛ける形状になりました。この上向きの引っ掛け型は、戦後の信管に継承されています。

 新型信管は、1945年には製造がおこなわれていたと思われますが、従来のM6信管が余剰在庫として存在したので、改良型のTNTタイプは、戦後しばらくのあいだ両者が並行して配備支給されていたようです。

 前回の記事でもご紹介した戦後のMk2手榴弾です。信管はM204A1です。初期のT2E1(M204)から信管の形状が変更されています。信管と弾体の螺着部の突起がなくなり、弾体のネックにフィットする形状となっています。繰り返しになりますが、 現在、国内で流通しているレプリカやダミーは、ほぼすべて、この戦後モデルを原型としています。

 1944年から製造が再開されたTNTタイプでは、無煙火薬タイプで廃止されていた信管と弾体との間に挟み込むガスケットが復活しています。左がWW2時代のガスケットの実物(M6信管用)、右がレプリカの代用品です。 ガスケットは直径2センチの赤色の硬質紙製です。

 前回と今回の記事で、Mk2手榴弾の変遷についてご紹介しました。次回は、Mk2手榴弾の種別と塗色も含めた外観上の区別を一覧としてまとめたうえで、第二次世界大戦の再現においてもっともオーソドックスなモデルについてご紹介します。

  前回の記事で出したクイズの答えは、おそらくみなさんおわかりだったかと思います。左がレプリカです。右が実物。不活性化処理済みの榴弾で、軍曹(Msg. Merwin J. Toome)のコレクションです。

 左のレプリカは海外製で、弾体がプラスチック、信管部がアルミ製です。非常によくできています。ガスケットを挟んでいるので、戦争末期のTNTタイプ(信管はM6A4C)を再現したものになります。

 信管部の色の違いは材質の違いです。右の実物は亜鉛製です。戦後の設計図面では代用としてアルミも規定されていますが、戦時中に貴重とされたアルミは手榴弾信管の生産にはつかわれなかったでしょう。

 以前にBCoのメンバー向けにまとめて輸入したときの写真です。ほれぼれするような出来です。このレプリカよりも出来のよいものは見たことがありません。ただ、残念な点は、弾体がプラスチック製なので重量が軽いことです。

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