爆薬の起爆に必要な雷管と伝爆薬

爆薬は火をつけても爆発せずに燃えるだけだとわかっていても、焚き火にくべる度胸はありません。

 トップの画像は先日のビクトリーショーでおこなった破壊器材の展示で、より身近に感じてもらえるように製作した2つの例示物のうちのもうひとつです。ミリタリーダイナマイト(コンポジション爆薬)を3本結束したものに、ダミーの非電気式雷管を挿入しています。

 「爆弾」や「ダイナマイト」といえば、導火線が飛び出していて、そこに火をつけると爆発するイメージだと思います。もちろん間違いではないのですが、そのイメージがゆえに仕組みがかえってわかりにくくなっているかもしれません。導火線の先には必ず雷管がついていますが、その雷管はダイナマイトなどの爆薬の中に挿し込まれて外側からはみえません。

 雷管は、火薬を詰めた金属製の棒状のものです。この模型でいうと、黒いコードの先についた銅管が雷管です。この雷管を爆薬に挿し込みます。

 Vショーで展示したパネルです。中央のイラストは、ダイナマイトとTNT、コンポジションのそれぞれの爆薬に雷管が挿入されていることを示したものです。このように爆薬を爆発させるには必ず雷管が必要です。

 火で起爆する方式のものを非電気式雷管、通電して起爆する方式のものを電気式雷管と呼びます。ほかに地雷などの待機型の信管でガラス製のアンプルが割れたときに薬液が漏れ出し、化学変化によって発火して起爆するものもあります。それぞれ起爆にいたる着火方法は違いますが、雷管の役割は同じです。雷管の起爆は、爆薬を爆発させるための「爆轟」(ばくごう)を引き起こします。

 パネルの説明にもあるとおり、ノーベルがニトログリセリンをもとにダイナマイトを開発して以降、爆薬は不意に爆発して惨事を起こさないよう、爆薬本体は低感度で安定性をもつようにし、任意に起爆ができる雷管による爆轟ではじめて爆発する方式で発展してきました。

 起爆の仕組みを非電気式起爆を再現した模型で説明します。この構成はパネルにある青丸の番号1~5に対応したものです。黒いコードが導火線で黄色いコードが導爆線です。導火線には引っ張り式の着火具がついており、反対側には雷管(銅管)と導爆線がテープで結束されています。導爆線は爆薬(ニトロスターチ1ポンド爆薬)にとりつけられています。パネル番号1~5の順にみていきます。

 ① 導火線に点火する…着火具はパーティークラッカーのようなもので、引っ張ると中の火薬に点火し、導火線に火がつきます。着火具のかわりにマッチをつかって導火線に点火することも可能です。

 ② 火が雷管に伝わる…導火線の中には火薬が詰まっているので燃えます。花火と一緒です。導火線についた火が雷管まで達すると雷管が起爆します。写真の導火線は、火をつけてからおおむね45秒~1分程度で雷管まで火が届く長さになっています。

 ③ 雷管が起爆して導爆線に爆轟を伝える…黄色の導爆線はなかに炸薬が詰まっています。ロープ状のミニ爆薬といってよいものです。火をつけても爆発しませんが、テープで結束された雷管が起爆すると爆発します。

 ④⑤ 導爆線から爆薬本体に爆轟が伝わり爆発します。

 導爆線は、爆薬に爆轟を伝えることができるので、雷管のかわりにつかうことができます。ただ、導爆線を起爆させるためには雷管が必要ですから、爆薬の起爆には必ず雷管が必要であることはかわりありません。

 爆薬の種類によっては、雷管だけでは確実に爆轟まで至らないものがあります。爆薬としての安全性=低感度と安定性を求めた結果ゆえともいえます。そのときにつかわれるのが伝爆薬です。

 教範に掲載されているテトリトール爆薬ブロックM2のイラストです。両端に雷管挿入用のキャップがついています。キャップの外側にある「TETRYL BOOSTER」とあるのが伝爆薬です。

 伝爆薬は、名前のとおり、爆薬に爆轟を伝えるものです。雷管の起爆によって伝爆薬が起爆し、爆薬に爆轟を伝える連鎖反応をおこします。本体の炸薬よりも感度が高く、威力のある爆薬を伝爆薬としてつかいます。

 伝爆薬は、破壊器材としての爆薬だけでなく、炸薬をもちいる兵器の多くに備わっています。砲弾や手榴弾はすべて伝爆薬(筒)を備えているといって良いと思います。 ただ、伝爆薬(筒)は不活性処理される際にたいていは除去されるので、私たちコレクターが目にする機会は多くありません。 レプリカでも伝爆薬(筒)まで再現したものは少ないので、あまり馴染みがないと思います。砲弾や手榴弾の伝爆薬については、次の機会にご紹介したいと思います。

 

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