これまで2回に記事をわけて、Mk2手榴弾の変遷についてみてきました。最後に、Mk2手榴弾をモデル別に一覧としてまとめるとともに、もっともオーソドックスなモデルをご紹介します。
各種教範等の資料にもとづいて作成したリストです。1940年~1945年に製造された7種類のモデルを対象に、仕様と外観の特徴を掲載しています。製造年は推測になります。
製造年 | 名称 | 炸薬 | 信管 | 弾体高 | 弾体径 | 外観 | 備考 |
1940-1942 | Grenade, hand, fragmentation, Mk. II | 無煙火薬 0.74oz (21g) | M10 | 85mm | 52mm | 弾体黄色塗装、ガスケットあり、底部プラグ穴あり。 | ― |
1940-1942 | Grenade, hand, fragmentation, HE, Mk. II | TNT | M5 | 85mm | 52mm | 弾体黄色塗装、ガスケットあり、底部プラグ穴あり。 | 信管と弾体は分離梱包。1940年時点で限定標準。1942年時点で在庫なし。 |
1942-1943 | Grenade, hand, fragmentation, Mk. II | 無煙火薬 0.74oz (21g) | M10A1/M10A2 | 85mm | 52mm | 弾体黄色塗装→ODを上塗り、ガスケットなし。 | ― |
1943-1944 | Grenade, hand, fragmentation, Mk. IIA1 | 無煙火薬 0.74oz (21g) | M10A3 | 85mm | 52mm | 弾体OD塗装、ガスケットなし。 | 1944年に限定標準。 |
1944-1945 | Grenade, hand, fragmentation, Mk. II | TNT 1.90oz (54g) | M6A4C | 85mm | 52mm | 弾体OD塗装、ガスケットあり。 | T2E1信管の代用として余剰M6信管を利用。 |
1944-1945 | Grenade, hand, fragmentation, Mk. II | TNT 1.90oz (54g) | T2E1 | 85mm | 52mm | 弾体OD塗装、ガスケットあり。レバーフック上向き。 | 余剰旧型弾体を使用。 |
1945- | Grenade, hand, fragmentation, Mk. II | TNT 1.75oz (50g) | M204 | 90mm | 57mm | 弾体OD塗装、ガスケットあり(2枚)。レバーフック上向き。 | 余剰新型弾体が払底次第、新型弾体に更新。 |
名称は、1943年~1944年に製造されたM10A3信管を装着するモデルのみ型式が「A1」となります。それ以外はすべて「Mk. II」(Mk2)です。初期のTNTタイプは無煙火薬タイプと区別するため、高性能爆薬を示す「HE」が名称につけられていましたが、1944年以降は戦後の廃止にいたるまで「Grenade, hand, fragmentation, Mk. II 」です。
1942年7月に発行された弾薬技術教範です。Mk2手榴弾は、弾体が黄色で塗色されていることを示しています。もともと米軍では、炸薬が充填された実弾を黄色の塗色としていました。これは手榴弾以外の砲弾や地雷などもすべて同じです。しかし、戦争の本格化にともない、弾体の塗色をODに変更しています。偽装の必要性からとおもわれます。
兵器弾薬中隊野戦教範(FM 9-20)には、1943年10月に塗色変更を指示する補遺C1が出されています。この頃には、すでに手榴弾を含む弾薬類は、工場出荷時の段階でOD塗色が実施されていたと思われます。また、在庫品を塗装しなおして前線に送ったり、教範にもとづいて前線で塗装する例もありました。工場出荷の場合は、あらかじめODで塗装したうえで、ネックに炸薬入りの実弾を示す黄色の帯を入れました。
第二次世界大戦でオーソドックスなMk2手榴弾の再現です。1942年~1945年に米軍兵士が手にしたモデルになります。左が戦前からあるMk .II(無煙火薬、M10信管)、中央が1942年から製造されたMk .II(無煙火薬、M10A1/A2信管)もしくは1943年から製造されたMk .IIA1(無煙火薬、M10A3信管)、右が1944年以降に製造されたMk .II(TNT、M6A4C信管)です。
塗色は、左は弾体が黄色でレバーは未塗装、中央は弾体がODでレバーは未塗装かODです。この中央のモデルは、いったん黄色の弾体に上からODを上塗りして、塗装が剥げた部分から黄色の地肌がみえるようにしてもいいかもしれません。また、戦地での塗装を再現するならば、ネック部の黄色のバンドを残さず、信管を含めてすべてODに塗装するのもよいと思います。右のモデルは弾体がODでレバーもODで、工場出荷時からこの塗色になります。写真では、光の加減で中央と右のモデルの弾体のOD色に違いがありますが、本来は両者ともに変わりません。
左と右のモデルは、ともに信管と弾体の間に封密用のガスケットがつきます。中央のモデルにはガスケットはつきません。
第二次世界大戦での再現であれば、1942年までは左のモデル、1943年以降は中央のモデル、1945年は中央か右のモデルがよいでしょう。
海外製のレプリカMk2手榴弾のレバー部分に、M10A3信管のスタンプを再現してみました。Mk.IIA1手榴弾になります。1943年から製造がはじまり、おそらく、第二次世界大戦の戦場でもっともオーソドックスなモデルの再現です。
このレプリカMk2手榴弾は、外観としてはパーフェクトですが、弾体がプラスチック製なので重量が軽い点が唯一残念な点です。そこで、実物に近い重量と質感を再現するため、製作にトライしました。そのことは、また改めてご紹介します。