南方戦線向け九二式重機関銃用の木製弾薬箱

以前から気になっていた日本軍の重機関銃用弾薬箱を製作しました。九二式重機関銃の7.7ミリ弾を保弾板で留めて紙箱でパッケージした30発を20個、計600発を収納するものです。

 日本軍の重機関銃用弾薬箱でよく見かけるのは、布張りで開閉式のフックの付いた、カーキ色の側面に「甲弾」の標記があるものですが、今回、製作したのは、このように緑色で着色された木箱に麻縄が付けただけ、留め金具もなく、蓋は釘止めという簡素な外観のタイプです。

Twitterでこの弾薬箱は「補給用」で、携行用とは異なるものである旨をご教示いただきました。ご報告申し上げます。


(2019年3月14日追記)

 こちらが現存する実物の画像です。日本では出物を見たことがないのですが、米国のネットショップやオークションでちらほらと確認できます。緑の着色からしても、おそらく太平洋戦争期の南方戦線へ向けて出荷されたタイプでしょう。

緑色の着色は、日本軍の偽装塗色ではなく、中国で戦後に接収された後に共産軍が塗色したものという説があるようです。


(2019年3月14日追記)

 アジア歴史資料センターのデータベースを検索したところ、箱の形状を定めた文書は見つかりませんでしたが、標記については、1944年5月に改正された時の兵器行制本部の文書が残っていました(C13010166100)。ネットで見られる実物画像も、ほぼ同様の標記ですので、これで間違いないでしょう。

 また、弾薬箱へ迷彩着色を施すことに関する文書も存在しており、細かい仕様については不明ですが、迷彩としての緑色の着色は、1944年8月頃まで行われたようです。「兵政補第七八三四号」で「補給用弾薬箱偽装塗色廃止」が通牒されています(C13010167700)。以上から、このタイプの弾薬箱は、いつ頃から出現したのかは不明ですが、1944年の中盤には標記変更と迷彩着色が廃止されていますので、海上輸送が途絶える前に南方戦地へ送られた弾薬箱の多くはこのタイプだったと推察されます。

 今回、製作したものは、現物が手元にないので正確なサイズが分かりませんが、実物画像と、内容物(保弾板留め7.7ミリ弾20発紙箱を横向きに立てて10列2段で収納)からアタリをつけ、板材の都合も考慮した上で、おおよそ横幅47センチ×奥行き22センチ×高さ22センチで製作しました。板厚21ミリの杉無垢材です。迷彩色は、緑をベースに茶色を混ぜたペンキをハケで着色しました。

 この弾薬箱は、このように四面の側板がそれぞれ切り欠きした4枚の板で組み合わさっています。木工で「欠き込み」「かぎ込み」と呼ばれる支持力が強い工法です。実際に製作してみて、耐荷重的に、実物はもう少し板厚が薄い気がしました。板厚は16ミリくらいでも良いかもしれません。

 試作で2箱を製作しました。持ち手のロープは麻製12ミリのマニラロープです。面白いもので、実物は片面に2本、斜めに取り付けられた補強材に通すロープ位置が上下で互い違いになっています。これも実物同様に再現しました。


 なぜ互い違いにしたのか、ちょっと分かりませんが、完成後に両手で持ってみる分には、特に違和感はありません。私感ですが、ユージンスレッジ『ペリュリュー沖縄戦記』で日本兵が背負う弾薬箱は、このタイプで、2本の麻縄を両肩に通して背負った気がしています。だとすると、麻縄はもう少し長かったかもしれません。

 側面の標記は、ステンシル文字になっています。この文字がクセモノで、最も近い明朝体のフォントで旧体字をいったんピクセル画像化した上で、一文字毎に加工修正、最後にイラストレーターで読み込んでアウトライン化したデータをカッティングマシンに送信してマスキングシートをカットします。最後にマスキングシートを貼ってスプレー塗装です。

 実物と比べると、若干、文字のラインが細いですが、雰囲気は出ていると思います。工場出荷年月と番号は書き入れていませんが、筆で手書きすると良いかもしれません。標記は1面だけか2面に同じ標記があったのか不明なため、また、急ぎでもあったので、片面のみです。

 出来上がりの精度としては、65%くらいという印象です。今週末のイベントに間に合わせるために、約1週間という突貫作業だったため、無垢材の反りを十分に修正できずに若干の隙間が出ていること、初めての鑿を使って切り欠けにトライしたこともあって、切り欠け部分の精度がイマイチでした。釘も打ち直しをしたので釘抜の痕も残っています。仮に次回リベンジするならば、切り欠けについては、はめ込みのメス側はホームセンターのカットサービスに依頼しようと思っています。

ユージン・スレッジ著『ペリリュー・沖縄戦記』。著者のスレッジは、ペリリュー攻略戦中に木製弾薬箱を担いで逃げる日本兵の姿を目撃し、その様子を記しています。補給が途絶えた孤島で玉砕を前に戦った日本兵の悲惨な姿です。

「The Pacific」の原作にもなった書です。ドラマでは登場人物(特に親友)がだいぶデフォルメされていることがわかります。また、ドラマのなかでの兵士たちの所作の理由がよくわかるので、まだお読みでない方はご一読をオススメします。

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