WW2米陸軍ライフル中隊の備品一覧

フォートベニング歩兵学校の資料をもとに、 1943~1944年時点の米陸軍ライフル中隊が装備携行した備品のリストを紹介します。

 WW2米陸軍ライフル中隊には、1/4トントラック(いわゆる”ジープ”)と1/4トンの牽引車(トレーラ)が火器小隊に2台ずつ配属されていますが、大隊支援中隊からも2.5トントラック及び1トントレーラが中隊の用品備品を積載します。

 筆者が所蔵するフォートベニング歩兵学校の資料です。歩兵連隊の移動と輸送に関する教本です。1943年7月と1944年2月の編成装備表(Table of Organization and Equipment)にもとづく車両搭載許容量表(Loading Table)が掲載されています。そこには標準的な歩兵連隊隷下各隊が使用する装備品が積載車両別に目録として提示されており、原則として個人携行品を除くすべての用品備品を網羅した内容となっています。同資料は、野戦における車両輸送という側面から、これまで必ずしも定かではなかった部隊管理の備品用品を明らかにする内容であるといえます。すなわち、1943年以降のWW2米陸軍歩兵部隊の野戦装備を再現するにあたっては、この目録が目安になるということです。

 本稿では、同資料から、歩兵大隊ライフル中隊の目録をリスト化してご紹介いたします。リエナクトメントやコレクションにお役立てください。

 以下のリストでは、備品の性質用途別にわけたうえで、内容品の数と名称を示します。各項目の先頭は備品数です。英語名称の後に#印で日本語訳を記しています。また、末尾の括弧は車両積載区分を示します。[T]は大隊支援中隊派遣の2.5トントラック及び1トントレーラ、[Jl]は火器小隊機関銃チーム配属の1/4トントラック及び1/4トンの牽引車、[Jm]は同じく火器小隊迫撃砲チーム配属の1/4トントラック及び1/4トンの牽引車です。車両積載区分のコロンマークの数字は積載数の内訳を示します。

 1943年7月時点では配備されていたものの、1944年2月時点ではリストから削除されているもの、逆に1944年2月に新しくリストに加えられた物品は、戦法と部隊運用に変化があったことを示します。リストでは1944年2月時点で削除されたものは数量に「-」印を附し、新たに加えられたものは数量に「+」印を附したうえで、名称は下線で示しました。これらについては、リストから読み取れる特徴とともに、リストの後で個別にコメントします。

【中隊事務用品】
1 Desk, field, empty, fiber, Co #野戦書棚(中隊用) [T]
1 Chest, record, fiber #書類入れ [T]
1 Typewriter, portable, w/carrying case #タイプライター [T]
1 Flag, guidon, bunting #旗竿 [T]

【野営具】
1 Fly, tent, wall, large, complete w/pins & poles #ラージウォールテント [T]
1 Screen, latrine, complete w/pins & poles #トイレ用仕切幕 [T]
6 Officer’s bedding rolls #将校用寝具 [T]
2 Lanterns, electric, portable, hand #電燭 [T]
+1 Lantern, gasoline, two mantle, commercial #ランタン [T]

【糧食】
2 Bags, canvas, water sterilizing, complete w/cover & hanger #水嚢 [T]
2 Buckets, general purpose, galvanized, hvywt w/o lip, 14-qt #バケツ [T]
1 Cans, set, corrugated, nesting, galvanized, w/cover; 10-gal, 16-gal, 24-gal, 32-gal #蓋付き缶 [T]
39 Cans, water, 5-gal (full) #水缶 [T]
8 Containers, round, insulated, M1941, w/inserts (empty) #食缶 [T]
3 Heaters, immersion type for cans, corrugated #煮沸器 [T]
1 Range, field, M1937, 3 unit #レンジ [T]
1 Tool box, for field range M1937, w/tools #レンジ用工具 [T]
1 Drum, inflammable liquid, (gasoline) w/carrying handle, 5-gal (full) #ガス缶 [T]
193 Rations #レーション [T]
+16 Outfits, cooking, 1-burner #シングルガソリンバーナー [T]

【衛生・理髪器材】
1 Kit, barber, w/case #理髪具 [T]
6 Clippers, hair #バリカン [T]
2 Kit, first-aid, motor vehicle, 12-unit #救急キット(車載用) [T:1/Jl:1]

【作業具】
5 Pr gloves, protective, impermeable #ゴム手袋 [T]
11 Mittens, asbestos, M1942 #耐熱手袋 [T:1/Jl:4/Jm:6]
5 Suits, protective, onepiece, impermeable #防汚着 [T]
-1 Tool kit, carpenter’s (complete w/tools) #大工道具 [T]
+1 Tool kit, carpenter’s #2 (complete w/tools) #大工道具 [T]
+26 Packboards, plywood, w/attachments and straps #背負子 [T:3/Jl:6/Jm:12]
1 Goggles, M1943, w/redlens #ゴーグル [Jl]

【通信・信号器材】
1 Radio set SCR-300 #無線機(大隊―中隊連絡用 ※大隊通信小隊から貸出) [Jl]
6 Radio sets SCR-536 #無線機(中隊―小隊間連絡用) [Jm]
2 Reel Equipment CE-11 (ww/0.25 mile wire W-130 ea.) #無電池音声通話回線 [Jm]
2 Tool Equipment TE-33 #電工具 [Jm]
-5 Flag sets M-133 #信号旗 [Jl]
3 Panel sets AP-50-A #対空信号板 [Jl]
4 Projector, pyrotechnic, hand, M9 #信号発射器 [Jm]
40 Signals, aircraft #信号弾 [Jm]
30 Flares, trip, M49 #信号花火 [Jm]
50 Signals, ground, assorted #信号弾 [Jm]

【化学戦器材】※個人携行分を除く。
-2 Apparatus, decontaminating, 1 1/2-qt, M2 #除染器 [T]
-3 Apparatus, decontaminating, 3-gal, M1 #除染器 [T]
1 Alarm, gas, M1 #ガス探知器 [Jl]
8 Kit, first-aid, gas casualty [Jm]

【武器】※個人携行分を除く。
1 Guns, machine, cal. .50, Browning, M2, HB, flexible #50口径機関銃 [Jl]
2 Guns, machine, Browning, cal. .30 M1919A6 #30口径機関銃 [Jl]
3 Mortar 60-mm, M2, w/mount #迫撃砲 [Jm]
-5 Launchers rocket, 2.36″, M1 #バズーカ [Jl:3/Jm:2]
+5 Launchers rocket, 2.36″, M9 #バズーカ [Jl:3/Jm:2]

【兵器整備用具】※個人携行分を除く。
1 Chest, steel M5, repair, Rifle, cal. .30, M1 #小銃用整備具 [T]
1 Set parts, spare, carbine, cal. .30, M1 #カーバイン用予備部品 [T]
1 Kit, cleaning, pistol, cal. .45 #拳銃手入れ具 [Jl]
1 Chest, steel, M5, repair, cal. .50 MG (w/spare parts) #50口径機関銃整備用具及び予備部品 [Jl]
2 Chests, steel M5, repair, cal. .30 MG (w/spare parts) #30口径機関銃整備用具及び予備部品[Jl]
3 Spare parts and accessories, Mortar 60-mm, M2 #迫撃砲予備部品及び用品 [Jm]

【弾薬】※個人携行分を除く。
660 Rounds cal. .50 MG Ammnunition #50口径弾 [Jl]
4000 Rounds cal. .30 MG Ammunition (16 chests) #30口径弾 [Jl]
144 Rounds 60-mm Mortar Ammunition (8 bundles) #迫撃砲弾 [Jm]
30 Rockets, 2.36″ #ロケット弾 [Jl:18/Jm:12]
15 Bags carrying, rocket, M6 #ロケット弾嚢 [Jl:9/Jm:6]
60 Device, firing #点火具 [Jl]

【擬装具】
-1 Net, camouflage, cotton, shrimp, 29′ x 29′ (for Trailer) #偽装網(シュリンプ)[T]
-2 Net, camouflage, cotton, shrimp, 22′ x 22′ (for Trailer) #偽装網(シュリンプ) [Jl:1/Jm:1]
5 Nets, camouflage, twine, fabric garnished, 15′ x 15′ #偽装網 [Jl:2/Jm:3]

【車両備品】
1 T/E Truck 2-1/2-ton & 1-ton Trailer Equipments #車両整備具 [T]
2 T/E Truck 1/4-ton & 1/4-ton Trailer Equipments #車両整備具 [Jl:1/Jm:1]
-3 Scabbard, rifle, M1938 #銃嚢 [T:1/Jl:1/Jm:1]
1 Mount, Truck, pedestral, M31 #機関銃用銃架 [Jl]
1 Mount, MG, cal. .30, M48 #機関銃用銃架 [Jm]

 リストの内容をふまえて、筆者なりに着目したい特徴をコメントしたいと思います。

 まず、【中隊事務用品】と【野営具】をみるとわかるように、テーブルやイス、組み立て式のベッド(フィールドコット)がリストにはありません。実はこれらは歩兵連隊全体でも計上がありません。すなわち、野戦で移動する歩兵部隊では、腰掛けそのものが考慮されていないことがわかります。実際には事務に不便でしょうから、折り畳み式のテーブルやイスの支給を受けたり、弾薬の空き木箱などを流用していたと思われます。

 次に、火器小隊が装備する30口径機関銃は、1943年に採用された新型で二脚式のM1919A6となっています。このため、A4型で使用する三脚がリストにはありません。実際には多くの歩兵部隊は終戦までA4型を装備していました。なお、A6型が優先配備された日系部隊では、射撃の安定性からか、三脚を継続使用していることが記録写真に残っています。50口径機関銃は車両銃架で使用することを前提としているので、リストに三脚はありません。

 次に1943年7月と1944年2月で変更のあった物品について個別にコメントします。

 まず【野営具】でガソリンランタン、【糧食】でシングルガソリンバーナーが追加されています。いずれも野戦における実態を反映したものと考えます。ランタンは電池供給の限界、シングルガソリンバーナーは中隊による一括配膳が困難な状況でも分隊別に温食提供を可能にすることが理由と思われます。

 次に【作業具】では、大工道具が更新されたほかに、背負子(パックボード)が配備されたことが特徴的です。米軍の背負子はユーコン型と呼ばれる初期タイプがありますが、歩兵連隊では背負子は1944年以降の新しいタイプのみが標準装備だったことがわかります。

 【通信・信号器材】では、信号旗が廃止されたことがわかります。また、【化学戦器材】では、除染器が撤去されています。いずれも戦法・部隊運用の変更を受けてのものと思われます。【武器】はバズーカがM1から新型のM9に更新されたほかは変更ありません。

 【擬装具】は、車両用(トレーラ)の偽装網が廃止されています。当初、車両用の偽装網は、シュリンプタイプと呼ばれる編み目が細かいものが採用されましたが、隠蔽効果が低いことから使用が中止されました。シュリンプタイプのネットは裁断され、兵士のヘルメットネットに転用されました。本リストの車両用偽装網の廃止は、そのエピソードを裏付けるものです。

 最後に【車両備品】です。銃嚢が廃止されています。これは各車両に備え付け型のラックが整備されることを反映してのことでしょう。なお、火器小隊の2台の1/4トラック(”ジープ”)が備える機関銃用銃架は、機関銃チームが後席に備え付ける50口径用のM31、迫撃砲チームが助手席に備え付ける30口径用のM48です。

 フォートベニング歩兵学校の資料から、ライフル中隊が管理する備品用品をご紹介しました。実際の史実においては、コメントとしていくつか記したように、上記リストと齟齬があります。それらについては、当時の記録写真や戦記・回想録の記述などを参考に、皆さんが目指す再現対象の実態を考究していただければと思います。

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